お清めの塩について

通夜、告別式に参列した際、会葬礼状や会葬御礼などに『御清め塩』などと記された小袋が同封されていることがあります。小袋の中身は身体を清めるために用いるお塩です。お清め塩について、またその使い方などについて見ていきましょう。

『お清め塩』とは

「お清め塩」は通夜や告別式から帰宅した際に、自宅に入る前に門前や玄関前で体に振りかけるように使います。規模の大きい告別式などでは葬儀場を出る際に必ず塩を踏みしめてから外へ出ることができるように、葬儀場の出口付近、参列者の通り道に塩が敷かれるケースもあります。塩を踏みしめることで、塩を体に振り掛けると同様に身を清めることができるのです。

 

塩で身を清める風習はその起源が『古事記』にも記されるほど、神道にはなくてはならないものです。伊弉諾尊(いざなぎのみこと)が妻のいる黄泉の国からこの世に戻る時に、穢れ(けがれ)を祓う再生の儀式として海水につかって禊(みそぎ)を行ったことが始まりです。この「海水」が「お清め塩」となったとされています。穢れを祓う儀式といっても、死者のいる黄泉の国や死者を「けがれ」としているわけではありません。けがれは「気枯れ」と書くもので、生きる力が枯渇している状態を指しています。愛する者の「死」を前にして感じるどうしようもない悲しみや喪失感は、生きる気力を失った、まさに「気枯れ」の状態です。この状態から自分を取り戻すために生命の源である海の力、海水=塩でけがれを祓うのです。

 

仏事での「お清めの塩」でも清めるべきは故人の御霊ではありません。天災や病などが長引くとき、塩で身を清めて厄払いをする、人の死の周囲にまとわりつく「邪気」を祓うというという日本で古来より続く風習です。一方で死を穢れとはとらえない仏教では、「お清め塩」を使わない宗派、日本に伝わる習俗の1つと容認する宗派と様々です。お清め塩を準備しないという宗派もあるので、使用については自分自身での判断となります。仏事でのお清めは塩だけに限りません。通夜の後の「通夜振る舞い」でふるまわれる食事やお酒にも酒邪気を払う力があるとされています。「通夜振る舞い」をすすめられた場合は遠慮せずに頂きましょう。

 

お清め塩の使い方

お清めは自宅に戻って自宅の門の内側へ入る前、すぐに玄関であれば玄関の前、集合住宅の場合は自宅の玄関の前で行います。穢れを室内に持ち込まないように玄関をまたぐ前に行います。

①塩を1つまみとる

②体に振り掛ける

胸→背中→足元というように、血液の流れに沿うように順番に塩を振りかけていきます。 在宅の家族がいる場合は家族に、いない場合は自分で肩越しに手を回して背中にも振り掛けます。

③服についた塩を払い落とす

そのまま家に入れば、塩によって祓われた邪気が塩とともに家に入ることになります。服に付いた邪気を含んだ塩はしっかり払い落としましょう。

④足元に落ちた塩は踏む

足元に落ちた塩を踏み邪気を完全に断ち切ってから家に入ります。

 

参列後そのまま仕事に出るなどすぐに帰宅しない場合、葬儀会場を出た際に足元にお清めの塩をまいて踏んでおくことで身を清めることができるとされています。

 

お清めに使われる塩

相撲で力士が撒いている塩も土俵を清める「お清めの塩」です。仏事で使われる塩も土俵で使われる塩同様に海水100%で作られている塩が用いられます。宗教の考え方や地域に伝わる風習などによってはお清めの塩が用意されないケースもありますので、お清めの塩を使いたい場合は玄関先に自分で準備してから出かける必要があります。

 

お清めの塩は食用を考慮して作られてはいません。そのまま処分する、庭にまくなど食用することは避けましょう。