宗派ごとに違う葬儀の作法について

日本で執り行われる通夜・葬儀のおよそ9割が「仏式」での葬儀と言われています。
ほとんどが仏式の葬儀といっても、宗派の違いによって参列の作法が大きく異なる場合があります。自分の宗教・宗派はもちろん、葬儀に参列する前に故人の宗教・宗派について知っておけば葬儀の場でのマナー違反に慌てる必要がありません。ここでは宗派ごとに違う「葬儀の作法」についてご紹介しましょう。

仏教の宗派について

現在の日本には仏教の宗派として「13宗56派」があるとされています。

全体の20%を占める浄土真宗が最も多く、続いて曹洞宗が12%、真言宗8%、浄土宗7%、

日蓮宗4%、臨済宗・天台宗が1%ずつとなっています。

同じ仏教と言っても、宗派が違えば葬儀の儀式や作法も同じではありません。主だった宗派の葬儀について、焼香や線香の作法などを見ていきましょう。

宗派ごとの葬儀の特徴と焼香の作法について

<浄土真宗本願寺派>

親鸞聖人が開いた浄土真宗は「南無阿弥陀仏」をお題目に唱えます。亡くなった信者(門徒)は阿弥陀仏により必ず極楽浄土に迎え入れられるため、浄土真宗の葬儀では故人の成仏を祈る必要がありません。弔電を打つ場合にも「冥福を祈る」、「お祈り」といった言葉の使用を避けることが一般的です。

焼香は押しいただかず(額の高さまで手を持ち上げない)つまんだ抹香をそのまま香炉へ落とします。本願寺派1回、真宗大谷派2回、真宗高田派3回と宗派によって異なります。お線香は1本を立てずに折って寝かせます。

 

<浄土宗>

「無阿弥陀仏」を唱えることで極楽浄土に辿り着けるという基本的な考えのもと、葬儀では僧侶と参列者全員が南無阿弥陀仏を10回唱える十念を行います。また仏の世界へと導く引導と、仏様の弟子になるための授戒も行われます。焼香は押しいただいて1回から3回行い、線香は1本を立てます。

 

<天台宗>

葬儀では法華経と阿弥陀経の読経、故人を仏の世界へと導くための引導が行われます。読経では念仏を唱えますが、特徴的な抑揚や節が付けられます。焼香は押しいただいて1回から3回、線香は3本を立てます。

<真言宗>

生きながらにして即身成仏ができるという教えをもつ密教の代表的な宗派です。

「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」を唱える真言宗の葬儀は、密教法具を使うなど他の宗派の葬儀とは違う雰囲気があります。焼香は3回を押しいただき、お線香は3本を立てます。

<臨済宗>

日々の行いは全てが修行であるとされる臨済宗の葬儀では、基本的には故人を仏弟子にするための「授戒」や、仏の世界に導き入れる「引導」を中心に行われ、故人に悟りをもたらすための葬儀とされています。仏様を供養する鳴り物や太鼓などが特徴的ですが、地域によっては葬儀の内容が異なることがあります。焼香は1回、お線香は1本を立てます。焼香の際は押しいただく、いただかないという決まりはありません。

 

<曹洞宗>

臨済宗と同じ禅宗のひとつで、座禅によって体と心と息を調和させ、安息を得ることで仏の姿に近づけるという考えが基本です。葬儀は仏弟子となるための戒律を故人に授けるための「授戒」と「引導」を中心に行われます。鳴り物や太鼓を鳴らすことも特徴的です。焼香は押しいただく1度目と押しいただかない2度目の2回。お線香は1本を立てます。

 

<日蓮宗>

「南無妙法蓮華経」のお題目を唱えると救われるという基本的な考えから、葬儀では故人が極楽に辿り着けるように願いながらお題目を唱え続けます。日蓮宗では、故人にとってのこの世での最後の修行の場が「葬儀」であると考えられています。焼香は1回または3回を押しいただいて行います。お線香は1本または3本を立てます。