手元供養について

遺骨の一部を身近に置いて故人を偲ぶ「手元供養」をご存知でしょうか。お葬式の形式も多様化している近年、供養方法も同じく様々なスタイルが見られるようになり、この手元供養も広がりをみせています。今回は手元供養について紹介します。

 

手元供養とは

従来、遺骨や遺灰は、お寺などに管理を任せることが一般的でしたが、手元供養とは、それらを自宅に置いて、遺族が管理、供養します。

お墓は作らず、置物や陶器にお骨を納め、自宅におけるオブジェとして残す方法や、小さな骨壺を用意して分骨し、お寺と自分との両方で保管する方法があります。また、指輪やペンダントに遺灰やお骨、髪の毛等の一部を納めて身に着ける方法もあり、多様化しています。

「お墓も仏壇もあるけど、故人にいつも見守ってほしい」という方や「お墓を継ぐ子供たちに負担を掛けたくない」という思いで手元供養を選ばれる方、墓じまいをして手元供養を考えている方もいます。昔と違って、お墓が遠距離にある場合も多い現代、場所や家の大きさに関わらず、大切な故人といつも身近に過ごすことができるのが手元供養の特徴です。

 

手元供養の種類

ここでは手元供養の種類をいくつかご紹介します。

・骨壺

小さな骨壺に遺骨を少し入れて仏壇などに置く方法です。色やデザインなどバリエーション多く選べます。相場は、小さな骨壺だけだと5,000円から8万円程度、ミニ仏壇セットだと10万円ほどです。

・アクセサリー

ペンダントや指輪、ブレスレット等アクセサリーとして手元供養する方法です。いつも身に着けることができます。相場は1000円程度から数十万円とデザインや素材によって幅広いです。

・プレート

遺骨を直接加工して別の物にする方法です。プレート加工では、名前や没年月日、イラストなども入れることができます。宝石加工では、遺骨から人工のダイヤモンドや真珠を作ります。作成するのに半年ほどかかります。相場は、プレートの場合、20万円程度、遺骨ダイヤモンドの場合、40から50万円程度、真珠の場合は20万円程度です。大きさによってはもっと高額になる場合もあります。

位牌

宗教や宗派にこだわらずに位牌の役割を持ちたい方に選ばれ、デザイン性に優れたものもあります。またペットの遺骨が手元にない場合などに位牌を選ばれる方もいます。

 

手元供養の方法

分骨

手元供養で遺骨を納める場合は、遺骨の一部を分骨することが一般的です。分骨とは遺骨を2つ以上に分けて納めることで、お墓や納骨堂に遺骨を納めて、一部だけを手元供養として納めます。最近では遺骨は永代供養墓に合祀して、分骨した遺骨を手元供養される方も増えています。

分骨のタイミングとしては、故人が家族の場合は、火葬後に自宅へ戻った時に骨壺から遺骨を取り分けるケースが多いです。そのほか、火葬のお骨上げの際に摂られる方もいます。既にお墓や霊園などに納骨された遺骨に関しては、墓地の管理者に了承を得た上で取り出すことになります。

注意点としては、分骨したお骨を再びお墓へ納骨することになった場合、管理者から納骨を拒否されることがあり、納めることができなくなる場合があります。こうしたことにならない為に、最初の納骨時に墓地の管理者している霊園や寺院に確認し、分骨証明書を取得しておきましょう。

形見

故人の形見を手元供養に用いる方もいます。箱に入れたり、写真立てと一緒に飾ります。また、ペットの手元供養の場合、ペットが使っていたリードやペットの毛などを用いる方もいます。

遺骨ペンダント

手元供養の形態のひとつ、遺骨ペンダントについてご紹介します。遺骨ペンダントはペンダントトップに少量の遺骨が納められるデザインになっているものが多く、遺骨の他に遺髪を納める方もいます。メモリアルペンダントなどと呼ばれることもあり、近年の手元供養のひとつとして注目されています。

遺骨ペンダントの注意点

いつも故人を身近に感じておきたい方へおすすめの遺骨ペンダントですが、作る際には以下の注意点を知っておきましょう。

・なるべく納骨までに決める(納骨後の分骨は、一度お墓から骨壺を取り出さなければいけないため手間がかかる)

・家族や親族と話し合う(近年用いられるようになったスタイルのため、ご家族の中には抵抗がある方もいます。事前に話し合い了承を得ましょう)

・素材のアレルギーの有無(金属アレルギーなどは、チタン素材などアレルギーを起こしにくい素材を選びましょう)

・紛失に注意する(再購入できない為、購入後は紛失や盗難に気を付けましょう)

費用

安価なものから高価なものまで多種あります。合金製やステンレス製で1,000円程度から購入できるものもあるそうです。一方高価なものでは数十万円以上するものもあります。素材やデザインによって費用は大きく変わるといえます。一般的に人気な素材はステンレスやチタンで、その他、シルバーやゴールドを選ばれる方もいます。防水や、名前が刻印できるものなどの種類も有ります。

 

供養の多様化と共に、大切な故人といつも一緒に過ごしたいという思いから増えている手元供養。皆さんもぜひご自身にあったスタイルを探してみてください。

 

火葬後に行う骨上げについて

日本では、人が亡くなった際にはほとんどの場合が火葬されます。

ご遺体を火葬した後は「骨上げ」という儀式を行い、遺族の手によって遺骨を骨壺に納めます。

この骨上には決められた手順があり、作法を守って行う必要があります。

もしもの時にしっかりと骨上げを行う事が出来るよう、骨上げの意味やマナーについてお話ししたいと思います。

【骨上げとは】

火葬後に遺骨を骨壺に納める儀式を「骨上げ」と言います。

故人の火葬が終わったらご遺骨の周りに親族が集まり、箸でお骨を拾い骨壺の中に納めていきます。

骨上げを行う際には、2人1組となりひとつの骨を長さの違う竹製と木製の箸1本ずつを1組として拾い、骨壺に納めます。

これには、故人をこの世からあの世に橋渡しするという意味があり、正式には男女1組となり、男性は左から、女性は右から拾って骨壺に入れます。

一説には、葬儀の儀式で多く用いられる「逆」を行うしきたりに準じており、「箸をたがえる」という非日常的な作法を行っていると言われています。

また、竹と木は互いに接ぎ木でないことから「決別」を意味しているという意味があるとも考えられています。

 

【骨上げの手順】

  1. 火葬後

火葬が終わったらお骨の周りに集まります。

ほとんどの場合が、火葬場の係員が火葬の終了を教えてくれ指示をくれるので、その指示にしたがって遺骨を囲みます。

喪主は骨壺を持ち、遺骨の頭部側へ立ちます。

 

  1. 遺骨を拾う

骨上げを行う際には、火葬場にて用意された箸を使用し、2人1組で拾い上げるのが一般的です。

拾い上げは故人との関係が深い遺族から行うのが一般的とされており、骨は足元の尾根から上半身の骨へと向かって順に拾い上げていきます。

参列者全員が骨上げを行っても拾うべき遺骨が残っている場合は、再び縁の深い順からペアで遺骨を拾いあげていきます。

 

  1. 喉仏の骨上げ

骨上げの最後には、喉仏の骨上げを行います。

喉仏の骨上げは、喪主ともう一人の近しい親族がペアとなり行います。

喉仏は厳密にいうと軟骨となるので、実際に骨上げされるのは第二頚椎と言われる骨となりますが、この骨は骨上げの際には重要な物であると考えられています。

その理由は特徴的な形状にあり、第二頚椎は突起や曲線の感じが仏様が座禅している姿によく似ているとされている為です。

 

【骨上げ後は】

骨上げが終了したら、係員によって骨壺の蓋を閉めて包んでもらえるので、受け取り火葬場を後にします。

帰り道は、遺骨は喪主が持ち他の遺族が白木位牌や遺影をそれぞれ胸に抱えます。

お骨が家に戻ったら後飾り檀に安置し、灯明をともして線香を上げます。

 

【東日本と西日本で骨上げの量が違う?】

同じ骨上げの儀式でも骨壺に入れる遺骨の量が西日本と東日本では異なる事をご存知でしょうか?

東日本ではすべての遺骨を骨壺に納めるのに対し、西日本では一部の遺骨のみを骨壺へ納めるのが一般的とされています。

その為、遺骨を入れる量も異なり、骨壺の大きさも東日本と西日本では変わってきます。

西日本では、骨壺へ納めなかった遺骨は火葬場の係員がその場で回収し、共同墓地などへ納められます。

全ての遺骨を骨壺に納める東日本の方は驚くかもしれませんが、この行為は遺骨を乱暴に扱っている訳ではありません。

なぜこのような違いが生まれたかというと、1873年(明治6年)に出された火葬禁止令が関係していると言われています。

火葬禁止令が通達されたことによって遺骨は土葬する事となりましたが、土葬場所の確保は難しく、わずか2年で条例は廃止される事となります。

この火葬禁止令が廃止された時から、遺骨や遺灰は全て持ち帰らなければならなくなりましたが、西日本では喉仏部分などの一部の骨を重要視し、それ以外の骨は火葬場でお願いするというスタイルになったと言われています。