費用や遺族の負担が少ない一日葬
「一日葬」という言葉を聞いたことはありますか。
一日葬とは、葬礼の儀式を一日で済ますもので、費用や遺族の負担が少ない葬儀として大都市で始まり、この数年、一日葬を選ぶ人が増えてきています。
葬儀といえば、お通夜、葬儀・告別式と、二日間にわたって行うというのが一般的な感覚ですが、なぜ一日で葬儀をすます「一日葬」が増えているのでしょうか。
日本は平均寿命が男女ともにのび、男性なら人生80年、女性なら人生90年という長寿社会を迎えています。長生きがあたりまえの社会では、葬儀を行う遺族や喪主も高齢者。故人が90才をこえる場合、その子どもは60才をこえ、定年退職していることも多くなっています。
年金生活に突入していれば、葬儀で多額の費用をかけるのは難しいことも。通常の葬儀より費用が抑えやすい、遺族の負担も少ない一日葬は、喪主の高齢化が産んだ新しい葬儀の形態といえるかもしれません。
一日葬と家族葬の違いは
近年、増加している葬儀には家族葬もありますが、一日葬と家族葬はどう違うのでしょうか。
家族葬は、葬儀への参列者を家族や親しい身内とし、少人数で行う葬儀のことをいいます。
家族葬は参列者の人数が少ない小さな葬儀ですが、その内容や費用はさまざま。10人くらいの身内だけで簡素に行うものもあれば、一般の葬儀のように華やかな祭壇をつくり、料理やお酒を用意してパーティのように豪華に行うものもあります。そのため、家族葬=費用がかからない、というわけではありません。
家族葬は通常の葬儀のように、通夜と葬儀・告別式で二日間行うものですが、参列者が少人数で香典はあまり集まらないため、祭壇や飲食ふるまいの内容によっては、費用が安いとはいえないケースもあるようです。
一方、葬儀を一日で行う一日葬の場合は、前日の通夜を行わず、葬儀・告別式だけを一日で行うため、通夜や告別式で渡す返礼品や料理のふるまいが一日分ですみ、僧侶に渡すお布施も一日分ですみます。また遠方の親族のためのホテル手配や宿泊費も必要なくなるため、葬儀の費用や手間を減らすことができます。
一日葬を行うメリットとは
一日葬のメリットとしては、まず通常の葬儀と比べて費用が一日分で済むという、経済的なメリットがあげられるでしょう。
その他に、通夜を行わないことで、葬儀・告別式の前日に参列者の対応をしないですみ、身内だけでゆっくり心ゆくまで、故人とのお別れの時間を持つことができるのも良い点でしょう。
通常の葬儀を行う場合、通夜や告別式の準備や参列者への対応で忙しく、遺族がゆっくり故人とお別れする時間がとれないことがままあります。お別れの時間を充分にとることは、遺族が死と向き合い、自分の気持ちと折り合いをつける大切な喪の儀式。身内だけのお別れの時間をじっくり持てることは、一日葬のひとつのメリットでしょう。
また、高齢の夫婦の片方が亡くなった場合など、葬儀に参列する遺族が高齢で、通夜と葬儀・告別式、二日間にわたって参列することが負担になることが考えられます。参列者の負担を減らすことができるのも、メリットのひとつです。
一日葬で気をつけなければいけないこと
さまざまなメリットがある一日葬ですが、実際に選ぶ前に気をつけなければならないポイントがあります。
それは、参列者の問題です。
一日葬では、前日の夜に行う通夜が省略されて、葬儀・告別式が日中に行われることが通例ですが、参列者が仕事などで日中に葬儀に参列できない場合、後日、弔問に訪れる人が多くなるかもしれません。
葬儀に参列してくれる人がどんな人か、何人くらいかを事前に確認し、夜の方が参列しやすいようなら、通夜を一日葬として行うことも検討する必要があるでしょう。どんな形で一日葬をプロデュースすることができるのか、あらかじめ葬儀社に相談してみてください。