スマホ・タブレット・ノートパソコン・と持ち歩けるモバイル端末が若い世代はもちろん、シニア層にも普及している近年、デジタル遺品というワードを耳にすることが多くなりました。
デジタル遺品とは、故人の携帯やパソコンなどに残されたデータや登録情報のことです。
故人の携帯のデータの消去や、アカウント削除を専門に行う業者も増えつつあります。
さらにスマホのお財布化やネットバンクの利用など、単なるデータや登録情報というだけでなく資産という側面も持っているのがデジタル遺品なのです。
アカウントの乗っ取りや、悪用されるケース・トラブルにつながる事例もあり、デジタル遺品を放置するのは危険です。そのため、生前にデータやアカウントの削除や整理をする「デジタル終活」という言葉も生まれました。遺された家族がトラブルに巻き込まれないように、また、自分が知られたくないデータをどう処理すれば良いのか調べてみました。
【デジタル遺品のトラブル】
家族がモバイル内にどんなデータを保持しているか? 利用しているSNSは何か?ネットバンキングやネット仮想通貨を保持しているかなど、全てを把握しているという人は少ないでしょう。
故人の遺品整理中に予期せぬ写真が出てきて長年の浮気が発覚したり、月額の利用料金が発生するサイトやアプリを利用していたため、ずっと引き落としが続いていた、など思いもよらない形で家族が傷ついたり負担を強いられることがあります。よくあるデジタル遺品にまつわるトラブルの一例を挙げてみましょう。
・写真やSNSによる不倫が発覚。
・ネット上で株取引をしており、亡くなった後で損失が膨らんでいた。
・ネット口座の資産を家族が知らず、相続税逃れとみなされた。
・インスタ、Twitter、Facebookなど、アカウントの乗っ取りや荒らしの被害。
・個人のIDやパスワードなど含むプライバシー情報流出による悪用
などです。
大きく分けると「お金」「個人情報」「趣味」のトラブルですが、中でも多いのは「お金」に関わるトラブルです。
店舗型の銀行口座は、通帳やカードが発行され自宅へ郵送されるため口座の存在に気付きやすい一方、ネットバンクは通帳を発行しないことも多く、故人が「へそくり」としてネットバンクを利用していた場合は、家族に知らせていない上ログイン情報も本人しか知らないので口座があることに気付きません。ネットバンク上の資産も相続の対象となるわけですから、遺された家族が相続税逃れの疑いをかけられることになるわけです。
ネット上の株取引も同様で、通常の株式の投資であれば証券会社から取引の書類が自宅に郵送されますが、ネット上ではメールで書類が添付されて完了してしまうため、取引をしていたことすら知らないまま、取引業者からの連絡で家族が知った頃には、損失が数百万に膨れ上がっているというケースもあります。
【デジタル遺品の処理】
亡くなった人のデジタル遺品を処理する場合、専門業者に依頼する方法もありますが、ネット上の資産管理やアカウント削除など、家族でなければ出来ないことも多々あります。
では、どうやって処理していけば良いのでしょうか?
1)会員サイトの退会&SNSのアカウント削除
PC・タブレット・携帯をチェックして、会員になっているサイトの退会手続きを取る。
故人が亡くなりアカウントを削除する旨をSNS上で告知する。後にそれぞれアカウント削除の手続きを取る。
2)写真や画像の削除
専門業者に依頼する。または、基本的には見る必要のない画像もあるので、データを見ないで全削除する方が良い。
3)デジタル資産の把握
メールをチェックしてネットバンクや証券会社からの連絡がないか確認する。あれば、各社に連絡して亡くなったことを伝えて資産の確認、取引中止の手続きを取る。
4)メール等のチェック
葬儀に呼ぶ人への連絡などに利用もできる。画像データ同様、見る必要のない物もあるが、トラブル回避のために必要な情報もあるため、保管しなければならないデータは印刷をしておく。
【情報のスペアキーの準備】
個人のプライバシー情報を、全て家族に知らせておくかは大変迷うところです。
知られたくないことや、趣味までいちいち伝えなければならないの?と負担に思うこともあります。SNSで家族のことを愚痴ってみたり…ということもあるわけですから、正直「気が引ける」というのも本音ではないでしょうか?
しかし、お金に関することは家族に迷惑をかけることもあります。いざという時のために口座情報やID・パスワードを記載したものを家族にも分かる形で用意しておきましょう。情報のスペアキーを準備しておくのです。
また、あまり利用していないSNSはアカウントを削除したり、無料会員サイトであっても特に利用しないまま放置しているのであれば退会しておきましょう。
【デジタル終活は日常のデータ断捨離から】
PCや携帯は家族であっても勝手に立ち入れないモノでもありますが、自らの死後、そこに立ち入らざる得ないのも「家族」です。最近は死後の終活ツールとして、家族へのメッセージを読んでいる間に指定したデータを消去してくれるソフトもあります。そういったものを利用するのも一つですね。重要なのは残しておかなければならないデータ、残して恥をかくようなデータを選別しておくことです。
これはシニア世代に関わらず、若い頃から年に1回程度はデジタル情報の<断捨離>を習慣化すると良いでしょう。
モバイル機器は日常で欠かせないツールであり、個人のプライバシーがギュッと詰まったブラックボックスのようなものです。大切な思い出も詰まっているからこそ、しっかりと管理したいものです。